第9話 思い当たる節

重い星が当たるぺんぎん

初めて心臓血管外科を訪れた時に言われた言葉。

「昨日今日の話じゃないな」

しばらくモニターを凝視した後に私をちらっと見て言葉を続けました。

「かなり前から始まってると思う」

2、3年何ていう話じゃないようです。十数年とかそれこそ云十年とかの話っぽい。

何故そんな長い間、そんな変な心臓抱えて何の疑いもなく生きてきたのか?その辺り振り返ってみようと思います。

今回循環器内科、そして心臓血管外科を受診するきっかけになったのは、先の記事で書いたように極端な手と顔の冷え性でした。実はこの症状に関しては今のところ心臓が原因であったかどうかはわかりません。心不全によってそういった症状が出るケースもあるらしいのですが、ハッキリとはしない。加えて、手術が8月、今はまだこれから冬を迎える段階なので、この冬を持っておおよその判断ができるのではないかと思います。今年も手指や鼻の頭が氷のようになれば別の理由。治っていれば心臓が原因であったと言えるかもしれません。そこは保留です。

冷え性が原因で通院した結果として弁膜症が発覚したということで、じゃあ、一般的に言われるような症状、「息切れ」「動悸」「めまい」「咳」この辺りの症状は全然なかったのか?

とんでもありません。

フルコンプリートです。全部ありました。かなり前からありました。

じゃあ何でその時に受診しなかったかと問われれば、それはもう「大したことないと思っていたから」としか言いようがありません。そういうケース多いですよね。人によっては少し変調があるとすぐに病院に駆け込むタイプの人もいますが、私はどちらかというと真逆の人間。ギリギリまで医者にかからないタイプだったのです。私は痛風持ちで、毎年のように痛風発作を起こしていますが、それですら半分くらいは通院しないで痛みが治まるまで待ってしまったりしていました。

しかし、ここ数年は太りすぎたことによる高脂血症や極端な高血圧(酷い時は200超え)になったこともあり、内科の受診は定期的にはしていたのです。それでも、個別の症状についてはついつい見逃してしまうのは今までと変わっていませんでした。

加えて、個々の症状について自分で勝手に原因を解釈してしまって納得させるという、病気に対してはしてはいけない判断をしていました。

思い当る節 その1 マスクの苦しさ

これは本当に最近のこと。かなり症状が進んでいる状態での自覚症状です。2020年からのコロナ禍で外出時にはほぼマスクをするようになりました。その時に、ものすごく息が苦しくてマスクをしていられないほどになることがありました。あまりにも苦しいので人目を避けて外して深呼吸したりということも。車で出かけるときなどは、用件が終わると急いで車に戻ってマスクを外す。それほど苦しかったのです。

私は花粉症です。高校生の頃からずっとですからもう大ベテランの花粉症です。春の3ヶ月間はコロナ以前からずっとマスク外出でしたが、今までこんな事は一度もありませんでした。

では、何故そんなに苦しいのに病院へ行かなかったのか。これは次の症状と少しリンクします。

マスクをして咳をする人

思い当る節 その2 変な咳

10年ほど前から変な咳が続く時があった。症状はたいていは3ヶ月ほど続いては消える。そして1~2年おきに症状が出る。そうなると、普通は風邪かな?と思いますよね。私もそうでした。その中には本当の風邪も混ざっていたとも思います。

その症状がこの2年ほど、収まらずに続くようになっていました。

常に気管に痰が絡んでいるような気持ち悪い感覚、朝晩は特にひどくて咳も止まらず、息をすると喉からピューピューとフエラムネのような音がします。お調子者の私は「見てみて、口開いたまま口笛吹ける」とかはしゃいだこともありましたが、フザケている場合ではありませんでした。

これも何故病院へ行かなかったのか?

ここでも間違った判断をしてしまいました。

私は寝ているときに「よだれ」を垂らすタイプです。激しく垂らします。たまに、それが喉に入ってしまってむせることがあります。そのため、この咳は「誤嚥」が原因だと勝手に思い込んでしまいました。朝晩特に調子が悪いのは横になっているからだとも思いました。

だから、「誤嚥性肺炎」「睡眠時 誤嚥」「唾液 睡眠」「喉 鍛える」とか、検索しまくった挙げ句、毎日喉を鍛えるために口をアグアグする体操までしていた始末です。もちろん、そんなことでは全く症状は改善しませんでした。この、喉の症状は手術直前まで続きました。

思い当る節 その3 運動中の息切れ

3年ほど大規模なダイエットをしていました。ダイエットブログも見てね。見てねじゃないですね。続けます。

その流れで2019年くらいから運動をしていました。ウォーキング、ジョギング、自宅での自重トレーニング。始めた頃にきつかったメニューでも続けるうちにこなせるようになってきます。最初は5回10回でも翌日筋肉痛で体が動かないレベルだったのが、半年、1年と続けるうちに100回超えても問題なくこなせるようになってきました。ところが、途中から導入した心拍数を上げて高い負荷をかけるメニューを始めると思うように行かない部分がありました。

このメニューは「HIIT(高強度インターバルトレーニング)」と呼ばれるもので、高強度の運動を、心拍数が完全に回復しないうち数ラウンド続けるという、今考えると自殺行為とも言えるトレーニング方法です。

フラットアウトバーピーGIF
マウンテンクライマーGIF

このトレーニング方法は、筋力はもとより心肺機能の向上にとても効果的なトレーニング方法のハズでした。ところが、日々感じられる筋力の向上とは裏腹に、心肺機能はとても良くなっているとは思えなかったのです。

どんなにやっても苦しいまま。それどころか、前述の喉の状態もあってドンドン苦しくなるばかり。

途中で挟む、普通にジャンプを続けるだけのような有酸素運動のときも、どうしても早めに息切れしてしまうのです。

これについても心臓が悪いという発想はありませんでした。

もともと学生時代の運動でも、固太り体型のせいもあってか、瞬発力タイプで持久力に欠けるタイプ。短距離走や力仕事は得意でも、持久走などは苦手なタイプ。

その記憶もあって、その延長か、さらには運動不足と加齢がたたってスタミナが落ちていると判断してしまいました。普段から自己肯定感の少ない性格のためか、自分がだらしないだけという結論を出してしまったのです。

その時期に苦肉の策を打ち出した結果が当時書いたブログに残っています。

タイトルが「ゆるめのHIITでカラダ徹底?改造をする」です。

HIITがあまりにも苦しいので、本来は行わない、種目間の休憩を入れて呼吸を少し整えるという「ゆるHIIT」と提案しています。それがHIITと言えるかどうかは別として。

当時は自分が弁膜症であることは全く想像もしていないのですが、その記事の中でこんな事を書いています。

実際にHIITをきちんと行った場合、心拍数を上げるのに工夫はいりません。

勝手にガンガンあがります。あっという間に最大心拍数近くまで心臓が暴れだします。
ですから、心拍数を上げるための心配は一切必要ありません。

問題は上がりすぎないようにすることです。

最悪死にます。

多分。
特に、一人暮らしの方、注意すべきです。

“ふくろのペンギン~ゆるめのHIITでカラダ徹底?改造をする”より

何も知らずに恐ろしいことを書いています。

またこの記事の中で、(おそらくはすでに弁膜症は進行していたであろう)10年ほど前に任天堂のゲーム機「Wii Fit」を使って有酸素運動系のゲームをプレイしたときのことを例として上げています。

息が整わない。

心拍が収まらない。

もう運動は終わっているのに、息が収まるどころかどんどん呼吸が激しくなってきました。
落ち着こうとしても、なにしろじっとしていられない。

檻の中のクマのように狭い家の中をぐるぐる回りながらゼェゼェしていたらそのうち吐き気はするは目眩はするは、

「まずい、心臓が止まる」

と思いました、その時は。

10分くらい、のたうち回ったでしょうか。

苦しんでいる最中は救急車呼ぼうかとも思いましたが、そもそも電話をかけられる状態でもなかったような気もします。

あれは過呼吸状態のようなものだったのか、なんなのか。結局よくわからないのですが、ほんとに怖かったです。

“ふくろのペンギン~ゆるめのHIITでカラダ徹底?改造をする”より

その時の記事のトップイラストがこれだっていうのも我ながら悪趣味です。無知は怖いですね。

救急ペンギンに運ばれる患者ペンギン

さらに、2020年の秋頃、1日おきの自宅トレーニングの間を埋めるようにジョギングを開始します。すでにコロナ禍は始まっていましたから、マスクをして走ってみたところ、1分と持たず気持ち悪くて吐いてしましました。いくらジョギング自体は久しぶりとは言え、週3回サーキットトレーニングをしている人がこうなるのはやはり心肺能力が極端に落ちていたんではないかと思います。

幸いにしてというか、このジョギングは心臓ではなく膝を痛めて1ヶ月持たずに中止しました。ありがとう、膝。弱い膝でありがとう。1日おきにHIITとジョギングを続けていたらもっと酷いことになったかもしれない。

弁膜症の診断の後は自宅トレーニングも休止。手術まで運動は軽いウォーキングだけになりました。

思い当る節 その4 失神

この項目の話については、心臓と関係がなく単なる迷走神経反射によるものである可能性も高いです。

ただ、弁膜症や心不全の症状の一つとして、失神もあり得るということですので、あくまでも参考例として読んで下さい。

これは正確な日付は覚えていません。ただ、そのマンションに住んでいたのは3年間ほどだったのでその間の出来事だったのは確かです。それは2005~2007年頃。もう10年以上前です。

その頃、小便をするときに目眩がする、頭がクラっとするというようなことがしばしば起こりました。なんだこれは、貧血かな、食べ過ぎはあっても栄養失調はないだろうな、そんな感じで軽く考えていました。

そしてその日、私は自宅のトイレで小便をしました。今は座りションですが当時は立って用を足していました。するとまた頭がクラっとしてきます。小便を続けるうち吐き気がしてきました。

「気持ち悪い」と思った瞬間、記憶が途切れます。

気がついたとき、私は便器の前でフル○ンで尻餅をつき、壁にもたれかかっていたのです。

そう、失神してしまったのです。

ただ、これは「排尿失神」と呼ばれるものらしく、心原性のものとは別で、原因としては神経性の失神に分類されるらしく、私の心臓の状態とその時点で関係があったのかどうかは分かりません。ただ、そういう事もあったということをここに書いておきます。

同じ様な症状としては、そこから時期を下ること10年ほど、つい最近の話です。

かつて120kgの巨デブになってしまったこともあり、生活習慣病の予防のために内科に通院していました。血液検査も同時に行うのですが、あるとき、採血した途端にやはり吐き気がしました。頭もフラフラ。立っていられないくらい。それまで採血でそんなことが起こったことはありません。血圧を計ってもらうと、上が90。その頃上が130くらいだった自分にすればかなりの低血圧です。その時も30分ほど病院のロビーで休んでいたら具合は良くなってきました。

これについても心臓の関係はわかりません。一応紹介しておきます。

思い当る節 その5 健康診断

これはもう思い当る節どころの話ではありません。ある意味、自分で治療の放棄をしてしまっていた話です。会社員だった時代、福利厚生の行き届いたホワイト企業でしたから毎年秋になると健康診断がありました。ある時期からは人間ドックになりました。実はそのときの結果を捨てずに保管してありました。何故これだけ取ってあったのでしょうね。当時のものは制服も社員証も給与明細も何もかも捨ててしまったんですが、健康診断の結果だけは一部何故か残ってました。

その中で一番古いものは2004年の結果。

健康診断結果

画像で見切れてしまいましたが一番下の欄は心電図の結果です。2004年の時点ですでにST・T異常が確認されていますST・T異常はものすごくザックリと言えば、心電図の波形が一部普通じゃないよということです。これは直ちに心臓病であるということではないらしいのですが、気をつけたほうが良いという所見が出ていることは確かです。

翌年の2005年からは続けて左心室肥大の結果が出ています。判定は全部D。要精密検査です。

その後ですか、もちろん何もしてません。精密検査しませんでした。今に至ってます。至ってしまっています。

理由はありません。軽く考えていただけです。なめていただけです。そんな人多いのではないでしょうか。

この時に精密検査をしていたらどうだったのか?弁膜症が見つかっていたらどうだったのか?

今よりも状態が良ければ経過観察になっていたかもしれないし、その時点で手術適応になったかもしれません。経過観察になっていたとしてもそれから15年以上経って、やはり今くらいの時期に手術することになっていたかもしれません。

どっちが良かったかなんて分かりません。15年と言えば医療も大きく進歩します。今のタイミングのほうが良かったかもしれません。こればかりはどちらが良かったとも何とも言えません。

ただ、もしあのとき心臓に病気があると分かっていたら、おそらく会社は辞めなかったでしょうし、その結果のあの介護生活がどうなっていたのかも想像もつかないです。

思い当る節 おまけ

心肥大については、実はもっと古い記憶があります。

20代になったばかりの頃、就職が決まり、その書類提出のために健康診断で病院に行ったときのことです。その病院は今はもうありませんが、ごく近所の病院で、問診をしてくれた先生もたまたま私を子供の頃から知っているご近所さんでした。

一通り検査を終えて最後の問診をしていると、結果を見ながら先生は「ちょっと厚いな」とつぶやきました。そして私に「もう入社は決定しているの?」と訪ねてきました。「はい」と返事をすると、しばらく考え込んだ後「まあ、いいか」と言って問題なしのチェックをしました。当時「厚いな」の意味がよく分かりませんでしたが、そう言われたのは今でもハッキリと覚えています。その時はそれでも漠然と、「ああ、何かちょっとおかしいんだ。でも就職に障らないように気を使ってくれたんだな」というのは理解できました。

後になって分かりましたが、このときすでに心臓が「厚かった」のでしょう。心肥大は始まっていたようです。

結局、思い返せば「あれもそうだったのか」「あれはもしかしたら…」といろいろ考えることはありますが、今の私にはもうどうしようもありません。このタイミングで病気が発覚して手術をしたのですから、これからの生活を良いものにするために工夫していくしかないのです。反省するのは良いことですが悔いているだけでは1ミリたりとも意味を成しません。

言えることは、今、体に不調を感じている人、健康診断で異常が出た人、それこそ思い当たる節がある人はすぐに病院へ行って下さい。今すぐに。いや、明日でもいいよ。この後すぐって意味じゃないよ。慌てないで。なんなら予約してね。

特に症状が無かったり軽かったりした場合、あるいはあってもすぐに治まってしまうような場合、病院に行きづらいこともあります。でも体がおかしいんだったらいきましょう。取り返しのつかないことになる前に。そして、周りにそんな人がいたら通院を勧めましょう。連れていきましょう。

甘く見ないほうがいいです。

風邪は万病のもと、昔の人はうまいこと言ったもんです。

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