第7話 病院内を上へ下へ~心臓と歯医者

歯科医の道具

歯科衛生士さんのチェック

入院予約の手続きをほぼ終えたところで事務員さんに言われました。

「この後、となりの部屋で歯科衛生士が歯のチェックを行います」

歯のチェックをするのは知っていましたが、え、ここでするんですか。外来じゃなくて?

この入院予約の部屋の扉一つ隔てたスペースへと案内されました。部屋というか、色々なものがわさわさと置かれている、部屋だか通路だかわからないようなスペース。その一角にこじんまりとしたパーテーションで区切られた小部屋がありました。そこでチエックをするようです。部屋に入ると続けて歯科衛生士の方がやってきました。

「歯科衛生士の〇〇といいます。これから歯のチェックをさせて頂きます」と首からぶら下げたIDを見せながら自己紹介してきました。

そういえば、病院の誰もが同じ様に初めてあった時にはIDを見せて挨拶してきましたね。今はこれが当たり前なんでしょうか。悪いことではないですけども、すでに事務員さんやその前の説明してくれた看護師さん、そしてこの歯科衛生士さんの名前は覚えていないです。ごめんなさい。もともと人の名前と顔を覚えるのは苦手です。

「このあとで歯科口腔外科の受診をしてもらうんですが、その前にお口の中を確認させて頂きますね」

歯科口腔外科での診察もこのあと別にあるようです。この場で行うのは予備チェックみたいなものなんですかね。お口の中をグルーっと診られました。

ここ2年位は2ヶ月に1回位のペースで歯医者でお掃除してもらっていたので問題はないと思うのですがどうでしょうか。歯並びは悪いですが関係ないですよね、そこは。

手術と虫歯

何故心臓の手術なのに歯のチェックをするのか?

これに関しては私のブログなんぞを読まなくても検索すれば大量にヒットはするので、そちらの専門家の話を読んだ方が良いのですが、それすら面倒くさいという人のために少し触れておきます。

虫歯や歯周病はそもそも細菌が原因です。その細菌が外科手術の際に他の部位に入り込んで悪さをするということがあるそうです。ちょっと馬鹿みたいな説明ですが、かなり噛み砕いて説明しています。肺に入り込んで肺炎を起こしたり、心臓で心内膜炎を起こしたり。

他にも、全身麻酔下で口から気管に呼吸器の管を入れるのですが、その際に詰め物やぐらついた歯があると、落ちて肺に入ってしまうことがあるそうです。実は私、過去に仮歯が寝てる間に肺に入って肺炎を起こしたことがあります。そういったことを防ぐためでもあるのですね。

さらにさらに、そういった器具を口に入れる時に、稀に歯がかけてしまうこともあるそうで、そのために術前の歯の状態をチェックしておくという意味もあるのだそうです。

入院治療を予定されている方へ、(口腔管理)

「特に問題なさそうですね」

私待つわ、いつまでも待つわ

ここでのチェックは終わりですが、今度は歯科口腔外科での歯科医の先生の診察があります。もらった予約表を見ると[13時ー歯科口腔外科]と書いてあります、が。

「少し予定が遅れてますので14時半過ぎになると思います」

1時間半は普通は少しではないですが、ここでは少しの感じがしてきました。慣れてきます。

「お食事がまだでしたらお食事を摂っていらして下さい」

ということで部屋を出ましたが、これから歯科を受診するのに歯磨きセットも持っていないこの状況で食事しちゃ駄目だろうくらいのことは思いますよね。大人だもの。

この時点でまだ12時半くらい。あと2時間、長いな。この日は検査に備えて朝食も食べていません。とりあえず飲み物くらいはいいかな、ということで地下のコンビニまで行ってザバスのプロテイン飲料を飲みました。

5分消化できたな。あと1時間55分。長いな。

ウロウロしてもしょうがないので歯科口腔外科まで行って受付を済ませてしまいました。もうここで2時間待とう。何なら寝よう。昼寝しよう。

そう思っていると、受付の人が何やら内線電話をしています。ちょっと嫌な予感がします。余計なことをしないでくださいよ。私は別に急いでいないのだから。

受付の人が受話器を置いてから間もなく、予想したとおり、診察室のドアが開いて緑衣にマスクの女性が駆け寄ってきました。

「すみません、まだ時間かかりそうなんです、もうちょっとお待ちいただけますか?」

ああ、ごめんなさいごめんなさい。そんなつもりはないんです。急かしているわけではないんです。行くところがないのでここで寝るつもりだったんです。何かこのままだと予定を無理にやり繰りして時間をこじ開けてくれそうな勢いだったので慌てて説明しました。

「いえ、2時半と伺っていますから大丈夫です。全然大丈夫です

そして同じ提案をしてきました。

「お食事まだでしたら(以下略)」

歯磨きセットも持っていないのに(以下略)

「いえ、大丈夫です、ここで待ってますので」

思い返せば自分の機転の利かなさに嫌気が差します。ここで2時間待ちますなんて無言のプレッシャーをかけているだけではないですか。一旦席を外すとか、もうちょっと気の利いた対応はできなかったのか。ていうか、そもそもなんで私はそんなに気を使っているのですかね。小市民ですね。でもこれから心臓を切ったり貼ったりされる病院で嫌われたくはないですものね。

歯科口腔外科

歯のレントゲン

このプレッシャーが利いたのでしょうか?結局13時半ごろ、予定の1時間ほど前に診察室に呼ばれました。

ここでもやはり歯のチェックなのですが、部屋に入る早々ある指示が。

「先にお口のレントゲンを撮ってきてもらえますか」

いやいや、さっきの伝令の人に伝えてくださいよ、そんな事は。いっぱい時間あったじゃないですか。

あまりにも理不尽な話に、思わず

「はいっ、わかりました」

と、とても良い返事をして放射線室に向かいました。だって予定より早く始まった診察ですもの。こんなことでイライラしちゃいけませんよ、ホントに。感謝しなくちゃ。

口のレントゲンを撮って戻ると再び歯科医の先生に歯の中をチェックしてもらいます。

ここでも問題はありません。ですが、入院まではまだ2ヶ月。ということで、入院前にも歯科の受診、そしてクリーニングの必要があるのです。それは普段通っている歯科で行うとうことで、紹介状を書いていただくことになりました。そのときはたまたま翌週に歯科の予約が入っていたため、その時に紹介状を持参して説明し、入院直前にあらためて術前の処置をする流れになりました。

この日の歯科口腔外科の診察はここまでですが、この後は、入院日、そして手術の後にもやはり歯のチェックを行うということです。

帰り際「頑張りましょうね」と言われました。

なんて言うことのない言葉ですが、メチャクチャ嬉しかったことを覚えています。

これで病院での長い一日が終わりました。

長いと言っても病院に入ったのが午前9時頃ですからたかだか6時間弱。でも何か精神的に長かった。

まさか帰るときにはすっかり心臓手術予約済みになっているとは考えもしなかった。まだ2ステップも3ステップもあると思っていた。

でも疲れはしたけど、あまり不安とかは感じなかったですね。不思議です。まだ2ヶ月先のことだったからでしょうか。

そういえば今朝からザバスしか口にしてないな。ダイエット中だから丁度いいかな。帰りになんか食べてくかな。駄目だなコロナだし、手術控えてるし。何か買って帰ろ。

その日の昼食は午後4時半でした。