ダイエット論として最近勢いを増していると感じるのは、運動は食事療法に比べて効果が薄いという声。
これについては概ね賛成です。
例えば基礎代謝が1500kcalの人の場合、1日絶食すれば(極端な例です。オススメしません)ずっと寝ていても1500kcalが消費されます。
これは、体重がおよそ200g減るくらいのカロリー消費量です(※脂肪1kg燃焼に7200kcalで計算)。
活動の激しさを数値化したMETs(メッツ)
運動をして1500kcalを消費するには何をどれくらいすればよいのかというと、
種目 | 時間 |
---|---|
近所での散歩 | 15時間 |
ヨガ、ストレッチ | 15時間 |
フィットネスバイク軽め | 5時間10分 |
一般的なエアロビクス | 4時間20分 |
一般的なジョギング | 4時間 |
テニス | 4時間 |
水泳(遅めのクロール) | 3時間20分 |
ラグビー | 2時間30分 |
ボクシング | 2時間 |
こんな具合です。
こちらは以前こちらの記事で少し触れた「METs」身体活動レベルの数値を元にして算出したものです。
METsとは「歩く」「座る」「食べる」のような基本的動作から始まって、日常生活の「入浴」「掃除」「荷物を運ぶ」「デスクワーク」のようなもの、さらに各種スポーツもその強度別にどれくらいのエネルギーを使う活動であるかを数値化したものです。
身体活動のメッツ(METs)表 https://to65.net/wp-content/uploads/2021/06/2011mets.pdf
このメッツ値に体重と時間、そして1.05をかけた数値が消費されるカロリーとなります。
「読書」や「テレビを見る」などの限りなく安静の状態が「1.0」、これを基準として例えばメッツ値「3.0」に設定されている「犬の散歩」は読書よりも3倍のエネルギーを消費するということになります。
このメッツ値を元にして計算したのが先に示した表となります。
効率が悪い=効果がないということではない
ご覧になればわかるように、かなりきつい内容です。
ダイエット御用達エクササイズの代表格ともいえるジョギングは4時間。女性に人気のヨガなどは起きている間中ほとんどしていないと1500kcalを消費しません。
ボクシング、ラグビーに至っては普段から体を鍛えている人でないと不可能なレベルです。
食事をいつもどおり減らさないで上記の運動をした結果得られるのは、24時間何も食べずに横になっていても得られる結果と同じ、わずか200gの体重減少なのです。
こういったことを根拠に「運動は意味がない」といった意見も散見されるのですが、決して運動に意味がないわけではありません。効果が薄いことと全く効果がないこととは違います。
「0」はいつまでも「0」ですが、「1」は積み重ねることで大きな数字になることができます。
1日に「1kcal」ずつ消費することができれば1年で「365kcal」を消費することができます。これは脂肪50gに相当するカロリーです。1日に20kcalならば1年で体重を1kg減らすことができるのです。
空いた時間に横になってゴロゴロしているのならば、体を動かしたほうが絶対に痩せるんです。当たり前ですね。
それに当然ですが、運動することで身体は強くなります。成長します。
いわゆる「鍛えられる」というやつです。筋肉の成長のしくみなんていう小難しいことはここでは扱いません。
ずっと寝ているよりも、少しでも体を動かした方が鍛えられるに決まっているなんて誰でも経験則でわかりますよね。
日常生活の消費カロリーを数値化してみる
さて、ここで1つ検証してみます。
このメッツは運動だけではなく、様々な日常生活も数値化されています。
そこで、2つのタイプの「一般的な」日常生活の消費カロリーをシミュレートして、どのくらいの差が出るのかを比較してみようと思います。
設定としては、「男性」「2階建て一軒家」「独身あるいは既婚子供なし」「体重60kg」の休日です。
1人は精力的にスケジュールをこなす人、1人は1日中ごろごろと過ごす人です。
サンプルAの人は朝早く起きてペットの世話をした後、朝食を食べてから掃除・洗濯、庭の手入れを終えてから外出して外食、野球観戦を楽しんでから買い物をして帰宅。夕食後も勉強をしたりパソコンで作業をしたりしてから眠りにつきます。
サンプルBの人は8時頃に一旦目を覚ますも2度寝。10時頃に起きてからも昼までボーッとするだけ。その後もテレビを見たりゴロゴロしたり、午後から夜にかけてはコンビニへご飯を買いに行く以外はほとんどゲームをして過ごしました。
結果、AさんとBさんでは1日の消費カロリーに375kcalもの差が出ました。
この375kcalがどの程度の差であるのか?
今度はこれをスポーツだとどれくらいの運動なのか、もう一度先程のスポーツで計算してみます。
種目 | 時間 |
---|---|
近所での散歩 | 3時間30分 |
ヨガ、ストレッチ | 3時間30分 |
フィットネスバイク軽め | 1時間15分 |
一般的なエアロビクス | 1時間 |
一般的なジョギング | 1時間 |
テニス | 1時間 |
水泳(遅めのクロール) | 50分 |
ラグビー | 40分 |
ボクシング | 30分 |
上2つの種目の強度が低めに設定されているため、突出して時間が長くなっていますが、他を見る限り、休日に時間をとって「趣味」として過ごすのには一般的な時間ではないかと思います。
これくらい程度の運動を、実際にダイエットのために行っている人も多いのではないでしょうか。(下の2つはちょっと特殊かも)
ところが、先に示したサンプルAの休日の過ごし方は、その1日で一切の運動をしていないのにもか関わらず、1日ゴロゴロしていたサンプルBに上記の運動を足した分だけのカロリー消費をしていたことになるのです。
見てわかるようにサンプルAはそれほど極端に活動レベルの高い行動をしてはいません。実は最も高いのは階段を登るときの「8.0」ですが、実質一番高い活動レベルで動いていたのは庭の手入れをしているときの「4.5」です。ちなみにメッツ表によれば活動レベル「4.5」は「バスケットボールのシュート」「ゴルフ」と同じです。
もちろん、更に高い活動レベルの行動をしたり、あるいはスケジュールのどこかでスポーツそのものを行えば、さらに消費カロリーは増えることになるでしょう。
しかしこの段階でも、少なくとも1日ゴロゴロしている場合と比べれば、運動をしているのと変わらないのです。
つまり、1日ゴロゴロとした挙げ句、日も暮れようかという頃に「ウォーキングでもしよっかな」と出かけるならば、朝から精力的に、活動的な生活を送ったほうがよっぽど良いのではないかと思うのです。
どうでしょうか。思い当たる人、きっと少なくないでしょう?
私は思い当たります。
このダイエットを始める前の、失敗したダイエットはみんなそんな感じです。
もちろん、日々のお仕事、学業の疲れもあるでしょう。それぞれの予定もあるでしょう。
でもきっとそれだけではないはずです。どうしてもその辺りを言い訳にしがちですよね?
まずは体を動かすクセをつけることが大事
カロリーを消費するという点では、スポーツだろうが家事だろうが仕事だろうが同じです。
趣味やストレス解消の目的があって運動をする場合は別ですが、ダイエットのために嫌々ながらも消化しているような運動ならば、それを他の行動に変えてみるという発想もありかもしれません。
例えば、1時間で4km歩くペースでのウォーキングは、実は家を掃除する活動レベルとだいたい同じです。
天気が悪かったりなどの理由でウォーキングができないならば、掃除を始めてしまえば立派な有酸素運動です。家もキレイになって一石二鳥です。
DIYやガーデニングは、それよりもさらに活動レベルは高めです。
また、お子様をお持ちの方、元気な子供と遊ぶというのは実はとても活動レベルが高く、草野球やゴルフ、テニス(ダブルス)と同じくらいカロリーを消費します。
おそらく実際に普段から子供を相手している方ならば、言われなくてもわかっているよといったところでしょうか?。
身体が重いと、ついつい身体を動かさないで済む方法、楽な方法を選択しがちです。もちろん身体を休めることはとても大事なことですが、やはりダイエット中は「自分が太っている原因」ともう一度向き合って、「ダイエット用の運動」だけではない「日常生活の積極的な活動量」も増やしていくことを考えましょう。
そうすることで、1歩も2歩も先に進みます。
と、自分に言い聞かせる毎日です。おそまつ。