管理人が平成時代の若き時代の記憶をもとに書いています。あくまでも一個人の体験であり、また、記憶が曖昧な部分もありますので、業界全部に当てはまるとは考えずに話半分でお読み下さい。

EPISODE 005 ~名機の思い出~ファイナルラップ

名機ファイナルラップ

EPISODE003で通信型レースゲームの搬入のお話を書きました。

昔から今に至るまで、レースゲーム、ドライブゲームはゲームセンターの定番です。

このレースゲーム系は、実は新製品投入時期ですら瞬間最大風速的な売上はそんなに取れないことが多かったです。ただし、長い期間安定して中くらいの売上を稼いでくれるので重宝するジャンルでした。流行り廃りに影響を受けづらい印象です。

特に興味がなくても、多人数でゲーセンに行ったりしたら「対戦してみよっか?」となりますものね。

そんなグループ客の100円の積み重ねです。

で、この対戦ができるタイプのレースゲーム、今でこそネット回線を通じて全国のプレイヤーが競い合うことが出来ますが、昔は当然同じ店内のゲームでしか対戦はできません。

通信レースゲームの雛形となったのがナムコが1987年に発売した「ファイナルラップ」で、これが最高4台(ニコイチなので8シート)での通信です。当時としては同時に8人で遊べるなんてとても画期的な出来事だったのです。

さて、そんなレースゲームのウンチクはもっと詳しいレトロゲーム系のサイトに任せるとして、また思い出話をしたいと思います。

ファイナルラップというゲームは、営業面でも非常に扱いやすいゲームでした。

先程述べたように、このようなゲームは定番中の定番。保有台数も多かったです。当時のゲーセンをご存じの方は、そういえばどこのゲームセンターにも置かれていたなあ、という印象がないですか。

実際そうでした。置くスペースがあれば置く。

シングルロケーション開設の話があると、設置機械をリストアップしていくわけですが、ビデオゲームが中心の店舗であれば、何はなくともファイナルラップ。とりあえずビールくらいの勢いでファイナルラップ。

ただし基本的にシングルロケーションは規模が小さいですから、たいてい1台のみです。2人対戦のみ。置けて2台4シート。直営店での設置で4台8シートをつなげたことはありますが、それはあくまでも大規模店舗のお話。

ファイナルラップに限らず、この「2 in 1(ツーインワン)」といわれるゲーム筐体はだいたいどれも同じようなものでした。筐体はあくまでも1台なのですが、当然のごとく中身は2個のゲーム。それぞれが独立しています。ゲーム基板が左右で1枚ずつ別々にあります。1枚で2人分を制御しているわけではありません。ですからこれ1台だけでも、通信作業は行われているわけです。

1台設置の場合は背面下部のスイッチを「内部通信」側にしておくだけで勝手に通信してくれるので、特にすべきことはありません。置くだけで左右の対戦が出来るわけです。

しかし、これを複数台設置する場合はそれぞれをケーブルで繋がなければなりません。

今のゲームだと、ネット通信が主流なのでケーブルは当然LANケーブルです。ゲーム機からHUBを通してルーターへ。手順はパソコンや家庭用ゲーム機を有線でネットなどにつなぐのと同じです。このあたりの機械になると、私が退職する直前3年位でやっと普及してきた頃だったので、あまり触れる機械は多くはありませんでした。

さらに遡ると、光ケーブルの時代があります。光ファイバーというやつですね。セガ製の製品は光ケーブルを使うことが多かった印象があります。印象なのでホントの内訳はどうだか知りませんが、そんなイメージ。ガラス繊維の中を赤い光がパカパカして通信します。

この光ケーブル、非常に取り扱いが面倒でした。折り曲げにものすごく弱いのです。ガラス繊維なのですこし角度を強めに曲げると被膜の内部で「ポキッ」と折れます。それをよく理解していない従業員がドライヤーの電源ケーブルよろしく折り曲げ折り曲げして畳んでいたりすると、ケーブルは中でポキポキです。メンテ関係は全然知らないというゲーセン店員は普通にいっぱいいます。通信できない系の故障の多くはこのポキポキが原因だったりします。

光通信ケーブル

そしてさらに時代を戻して、始祖、ファイナルラップの時代です。

このファイナルラップ、というかこの頃のナムコ製品全般ですが、通信方法はとても単純なものでした。

RCAケーブルというものを使います。

RCAケーブル、わかりますか?

名前聞いてピンと来ない人もいるでしょう。でも、少なくとも昭和時代を過ごしたことのある人で、これを見たことのない人はいないでしょう。名前を知らないだけで。

赤白黄色のあのケーブル

どうですか、見たことあるでしょう。

そうです。あのビデオデッキとテレビをつなぐあれです。スーファミやプレイステーションとテレビをつなぐあれです。

内部のプログラム的なことは私にはわかりません。おそらく、データ量もそれほどのものではなかったのでしょう。このおなじみのケーブルでデータのやり取りをしていました。

筐体の後ろ側の下、電源スイッチや電源ケーブルのある場所に、通信用の小さな基板がついています。

そこにこのケーブルをつなぎます。

つなぎ方は複線です。1本だけでなく、上り下りが必要となります。

ファイナルラップのつなぎ方

特に難しい手順はありません。難解な工学知識も必要なし。取扱説明書に「つなぎ方」ってちゃんと書いてありますので、その通りつなげばよいだけです。

ただ、当時もおデブさんの私は筐体と壁の狭い隙間にしゃがみこんで作業するのが多少息苦しかった程度です。フガフガ。

あともう一つ。このケーブルは当然筐体に付属してくるのですが、実に不親切なことに色分けもしてなければ番号も振っていない。全部同じ。機械側の端子も何の区別もなし。全部同じ。

なので上記の図のように端と端をつなごうとして、狭くて薄暗いところで作業していると「あれ?これどっち?」てなことがしばしば。

2人がかりでやっていれば、片方がケーブルをクイクイと引っ張って「こっちこっち」とやればなんとか分かるのですが、1人のときは端子を持って右往左往。行って戻ってまた忘れて。

2台通信ならまだしも3台4台なんて時(めったに無いですが)はもうグッチャグチャです。

で、結局多くのファイナルラップのケーブルはこうなりますわな。ご家庭のテレビの裏といっしょ。

RCAケーブルにつけた目印

でも、これ2台セットでずっと移動し続ければよいのですが、だいたいお店から取り下げられたらバラバラになります。そしてケーブルもバラバラに。

新たな設置先で別の機械とセットになって、また始まる「あれ、どっちだっけ?」

やってる人間が馬鹿なのか。機械の仕様が悪いのか。

なんか変ですね。ケーブルの事ばかりが思い出されます。

ファイナルラップの思い出話を語ろうとしたら、ケーブルの話になりました。