管理人が平成時代の若き時代の記憶をもとに書いています。あくまでも一個人の体験であり、また、記憶が曖昧な部分もありますので、業界全部に当てはまるとは考えずに話半分でお読み下さい。

EPISODE 002 ~ゲームを運ぶアリさんたち

ゲーム機を分解して運ぶありさん

前回、いろいろなランク(種類)のお店、そしてそのお店によって設置するゲームのランクも変わってくるというお話をしましたが、なにはともあれ営業するためにはお店にゲームを設置しなければなりません。

それがどのようなお店であろうと。

最近は一部の小さなゲームコーナーを除けば、ゲームセンターもめっきり大型化しています。ロードサイド型しかり、ショッピングモール内のお店しかり。

そういったお店の場合、昔はともかく最近ではきちんと大型物資の搬入経路が確保されていることが多いです。大型のゲーム機でもスッポリ入るほどの大型エレベーターがついていたり、またそれを運び入れるための搬入扉も予め大きかったりします。また、エレベーターがないような場合でも、ホイストといわれる吊り上げ機がきちんとついていたりします。

巨大搬入口とホイストクレーン

難点を言えば、最近はバックスペースの通路も広めに確保していることが多いものの、大抵その通路は部品や景品、はたまたいろいろな備品等で消防法などどこ吹く風の様相を呈しており、すんなりと搬入とはいかないことも多いです。あれは本当はまずいですよね、災害のとき。

ところが、それはあくまでも「最近の」「ちゃんとした」「大型店」のお話。

当時、下々の我々が携わるシングルロケーションではそんなわけには行きません。

エレベーターがなかろうが、ビルの何階であろうが、入り口が狭かろうが段差があろうが、設置すると決めた機械は何が何でも、どんな手を使ってでも搬入せねばならないのです。

ゲームセンターに遊びに来られる方々は、新しいゲームが入っていたら、「わあ新型だ、遊ぼう」くらいの感覚しかないでしょう。そりゃ当たり前ですよね。「どうやって入れたんだろう?」なんて考える人はちょっと変わった人です。

でも、その裏ではゲームピラミッドの底辺の人々がそれはもう必死こいているのです。

ゲーム機をどこそこのお店に設置すると決まると、まあそれはざっくりと搬入計画を考えます。

平面をゴロゴロと台車転がして済むようなお店は半分もありません。シングルロケーションはそもそもゲーム用に作った店舗ではないことも多いので、ゲームを搬入する想定などしていません。

大概いくつもの障害物が待ち受けてています。

例えば、2階店舗・階段なし・ホイストなしというお店に重量4~500kgのゲーム機を設置する場合どうするか。

まず第1に、このゲーム機をどこまで分解できるのかを考えます。

座席部分とモニター部分、はたまた動力部、その他看板など、ばらせる物はできるだけ分解して重量とサイズを小さく出来ないかシミュレートします。というか、シミュレートもそこそこに、現地で「あ、やっぱり無理だ」となって、無理くり分解するようなこともあったりなかったり。

そしてそれでも無理そうな場合、出来るだけ人をかき集めます。よその部署から手が空いた者がいないか声をかけて、その時間だけでも来られるものは招集します。お休み予定だった人も容赦しないで、その時間だけとお願いします。人海戦術です。もちろんそんなに都合よくは人数が集まりませんが、それでも1人より2人、3人より5人の方が良いに決まっています。何が良いって?それは人数が多ければ怪我人が出なくてすむからですよ。

ゲーム機を分解して運ぶありさん

ちなみにゲーム機の搬入は救急箱、最低でも絆創膏持っていったほうがよいです。無傷で帰れないことも多いです。

さて、分解も無理、人数も集まらない、そんなときはどうするか?

諦めますか?

そんなわけには行きません。また小一時間説教くらうご指導頂くのは嫌です。

その時は最後の手段です。究極の一手です。禁断の秘技を使います。

それは

「なんとかする」です。

そうです。なんとかするんです。そこまで来ると、もう理屈ではありません。

脳と筋肉をフル回転させます。

するとあら不思議、なんとかなるんです。

某ブラック経営者みたいなことを言っているようですが、実際それで何とかなってきたので何とかなるのでしょう。

ゲーム機の搬入は我らゲームピラミッド底辺の創意工夫と筋肉番付に支えられていたのです。

で、おかげさまで私の腰には今もヘルニアがあるのです。