アップライト筐体という筐体の区分があります。
「Upright」で直立という意味らしいのですが、文字通り立って遊ぶように作られたゲーム機です。
歴史的にはかなり古く、むしろビデオアーケードの始祖的なポジションではないでしょうか。私が子供の頃はビデオゲームといえばこの筐体だったような気がします。
立って遊ばなければならない不便さからでしょうか、やがてビデオゲームの主流はテーブル筐体からミディ筐体(ミドルアップとも)と言われる現在主流のタイプへと移ります。
アップライト筐体はその後、ガンシューティングや占い、音ゲーやパーティーゲームなどで使われるようになっていきました。
そんなアップライト筐体ですが、ちょっと変わった構造になっていたりします。
初期の頃のタイプ、また、小型の単純な(レバーとボタンで遊ぶような)ビデオゲームの場合は特別な部分はありません。プレイヤーの立ち姿勢からやや前方に目を落とした位置に斜めにモニターが取り付けられたタイプです。
古いものだと、モニター自体ほぼ水平に近い角度で付いているもの多く、この場合筐体の上部と左右のフレームは日よけの役割を担っていたりもしました。屋外ロケも多かった頃です。
これが、大型でプレイヤーの身長ほどの大きさの筐体になてくると少し様相が変わってきます。
かつてのガンシューティングなどはこの形が多かった記憶があります。
どのような経緯でその構造になっていったのか知らないのであくまで想像ですが、画面を立位のプレイヤーの視線の高さに合わせるとなると、モニターの設置位置を筐体のかなり上部に設定しなければなりません。ところが当時のモニターはブラウン管です。これを目の高さで垂直に設置するとなると、重心がかなり上になり筐体が不安定になります。
ゲーム機の筐体というのは実は中身スッカスカの場合が多いです。中に入っているのはモニター以外には電源ユニットと基板くらい。あとはスッカスカです。中で人が生活できるくらいスッカスカです。外側のフレームも軽い合板が使われていることが多かったので、安定感はあまりありません。今は知りません。当時の話ですよ。
ですから、モニターをそんな位置に置いたら頭でっかちで危なくてしょうがない。
で、実際のガンシューティング筐体がどうなっているかというと、モニターはプレイヤーのお腹の位置くらいに真上を向いて固定されています。そのモニターに映される画面を斜め45度に置かれた鏡に反射させてプレイヤーに見せています。つまり、プレイヤーが見ているのは鏡に写った画面です。当然モニターに出力されている画面は上下左右が反転しています。
昔、画面のお掃除を従業員にしてもらったところ、電源を落とした状態だったために下のモニターに気がつかず、鏡だけピカピカにして終わった人がいました。当然モニター自体はホコリだらけなので画面は汚いままです。
従業員ですらこんな人もいたので、知っている人は知っているでしょうが、意外と知らずに、というか気にもしていなかった人もいるのではないでしょうか。
そういえば、たまに独特のゲームを出すあのナムコが、この鏡をハーフミラーにして、鏡の裏側に置かれたジオラマと画面を合成する「ゴーリーゴースト」なんていう名作もありました。あれはまさにこの構造を利用した素晴らしいアイデアでしたね。
さて、そのような試行錯誤の末に生み出された素晴らしいアイデアですが、一方で試行錯誤しすぎて災難を巻き起こすこともあるのですが、それはまた別のお話で以下に続く。